いつも大変お世話になります。
ミリオネットの田中潮です。
- 「あなた」の価値
- 日本とアメリカでの比較
- 見えないクレーム
先日は、「コト」の事業ドメインを設定し、それを全社員で共有する事の大切さと、その事例としてディズニーランドを紹介しました。
今回は、「人」をモチベーションの観点から考えてみたいと思います。
特に、私がアメリカの優良小売店舗の視察に行った経験から、日本とアメリカの小売業における働き方の違いについて私が感じた事を紹介します。
最初にお伝えしておきたいのは、視察に行ったのは大手チェーン店にも負けていない地域密着型の優良店舗ということで、日米全ての小売店という事ではありませんので、ご注意願います。
私は、社会人1年生をカメラの全国チェーン店で経験しました。
そこで経験した事こそ、実店舗に必要な経験価値の提供そのものでした。
「あなた」の価値

ある年配のご夫婦がカメラを探しておられたので、1年生だった私は張り切って接客しました。
が、その時には見積もりを提出して終わりました。
ところが後日、「やぁ、田中さん。この前買いに来たんだけど、貴方がいなかったから出直してきたよ。」
と、そのお客様が私に声をかけてくれました。
見積もりはお渡ししていますし、「カメラ」という工業製品ですから、誰から受け取っても同じ値段で同じ物です。
しかも、そのお客様は市外の遠方から遥々ご来店されていたのです。
当時の私には、その理由が全く分かりませんでした。
そこで私は、
「お客様、遠いところ本当にありがとうございます。」
「しかし何故わざわざ出直していただけたのですか?」
と素直に聞いてみました。
するとお客様の答えはこうでした。
「田中さん。私はね、このカメラを貴方から受け取りたいんだよ。」
「貴方から受け取る事に意味があるんだ。」
とおっしゃっていただけたのです。
お客様が定年を迎えること。
今まで支えてくれた奥様に恩を返したいこと。
その為に、これからたくさん旅行をして奥様と思い出づくりをしたいこと。
そして・・・
「その思い出づくりのカメラを、私は貴方から受け取りたいんだよ!」
こうおっしゃっていただけた事を理解した時、私は胸に込み上げてくる熱い感情を抑えることができずに、目を真っ赤にしながら、ひたすらお礼を申し上げました。
私の仕事は「カメラ」という工業製品の販売ではなくお客様の「思い出づくり」をお手伝いする事なんだと理解出来た時、「私は、なんて素晴らしい仕事に就いたんだ!!」と大喜びしたことをハッキリと覚えています。
私が見てきたアメリカのお店では、1年生の時にお客様に教えていただいた「価値を売る」という事が仕組み化されて、それが企業の「強み」として収益に繋がっていました。
日本とアメリカでの比較
よく時間当たりの生産性について「日本は欧米に比べて低い」と言われ、それがデータでも示されています。
一説によると小売業、飲食業、宿泊業などでは成長性も付加価値額も低く、生産性でみるとアメリカの5割程度にとどまっているというデータもあります。
サービス業に携わる私にとって非常に屈辱的なデータです。
日本のサービスは世界的に見ても高水準だと思います。
なのに何故、生産性が低いのか?
もちろん日本にも素晴らしいお店はたくさんありますし、欧米でもクレンリネスが行き届いていない粗雑なお店もあります。
それでも、私がアメリカの優良小売店に行って違いを感じたことは何か?
それは・・・現場のモチベーションです。
それを支えているのは「権限委譲」の仕組みです。
研修に参加したお店の全てで緻密なデータ分析が行われており、例えばサンプル提供すると(その商品の)売上が○○%上がるなどという情報を把握しています。
その情報に基づいて、一定のルールの下で従業員に試食の実施を許可するなど権限移譲がなされており、従業員は権限の範囲で自ら考えて行動し、お客様と接していました。
従って、レジ担当者がレジを離れて、お薦めの食品を私たちに試食させてくれたり、お客様の要望に応じて商品を小分けにしてくれたり、いろいろと従業員が自ら考えて動いています。
その中心にあるのは、やはりインナーブランディングでこれまで紹介した「理念」や「価値感」の共有です。
仕事を通じて、地域貢献やお客様満足を提供する自分の仕事に「誇り」を持っているのです。
「貴方から受け取る事に意味があるんだ。」
と言っていただけたお客様の言葉を思い出しました。
しかしその時、一緒に参加していた日本のスーパーの経営者は私にこう言いました。
「私は、ここまで現場を信用できない・・・。」
「お店がグチャグチャになってしまう!」
・・・と。
大手ではチェーンストアオペレーションという効率化の為の本部主導の考え方がありますが、日本では地域密着型店舗でもこのやり方に習っているお店が多い気がします。
しかし、地域密着型店舗こそインナーブランディングを行い、
経営者と従業員で価値感を共有し合い、
従業員が(お客様の為に)自ら考え動くことで、仕事に「誇り」を持っていただく
ことが大切なのだと思います。
見えないクレーム
以前「見えないクレーム」の話しをしましたが、日本のお店では、お客様と店員さんとの間に一定の距離を感じてしまいます。
「親しき仲にも礼儀あり」という国民性でしょうか。
分かりやすい例で説明すると、商品の場所を尋ねる、。日本ではほとんど「○番通路の奥にございます」という説明になってしまいます。
私が視察したアメリカの店舗では、その全てが商品の前まで私を連れて行き、指さし確認をしてくれました。
そして「他に困ったことはありますか?」と必ず尋ねてくるのです。
ここに仕事に対するモチベーションの違いが出ていると強く感じました。
日本の接客は非常に丁寧です。
だからこそ「見えるクレーム」を恐れるあまりに、マニュアル化された均一的な丁寧さになっていったのかもしれません。
ですが経営的に考えると、もっとお客様の心に踏み込んだ接客サービスが必要ではないかと考えるのです。
私自身が大手チェーン店に勤務していたので、余計にそう感じているのかもしれません。
繰り返しになりますが、日本の小売業は非常に品質が高くサービスのレベルも高いです。
だからこそ、従業員に対する戦略的人材活用が必要なのだと考えているわけです。
このテーマは、非常に重く賛否両論だと思いますので、次回は引き続いて私が視察した店舗の具体例を紹介したいと思います。
「貴方の価値」は値段に変えられません!
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。